(菅原)第2回で、日本の企業とは違った新しいサービスの提供についての期待、とありました。我々QMSInternationalはブロックチェーンをPeppolのアクセスポイントに接続するというプロダクトを出しました。
(加藤)Open SourceであるPeppolにOpen SourceのQuadranblockchainを接続することは、必要ないのではないでしょうか。
(菅原)鋭いですね、実際、Exchange summitの席でもいろいろな方から同じ質問を受けました。現時点の4コーナーモデルではBC機能は保険を掛ける程度に限定されます。しかし、Peppolの伝送レイヤーを邪魔せず、Peer to peer、time stamp, 相互認証という特性は、改ざん防止、各コーナーでの伝送状況のモニターなどユーザーにおけるメリットをはじめ、デジタル署名のあり方が変わったり、KYC同等の機能などに将来生かされると思っています。また、Open Peppolから説明のあったC5には、スマートコントラクトの付加で非常に有効なツールになると思います。加藤さん言われたB2Bでも、電子インボイスを起点に、様々な応用、拡張を可能にすると考えています。
(加藤)Exchange summitでも、実際ブロックチェーンへの興味が言及される一方、高い、という理由で除外という結論付けられたお題がいくつかありました。Quadrans Blockchainはどうなのでしょうか。PAとしても、Peppol E-Invoiceの利用促進が任務となります。その観点からも、ユーザーが負担するコストには関心があります。
(菅原) QMS InternationalはEIPAのメンバーになりました。デジタル庁から見て、QMS Internationalのような海外企業がEIPAのメンバーになることにどんな期待をしますか。
(加藤) EIPAは、当初10社の会計・ERPベンダーで設立された民間団体です。同時に、日本での電子インボイスの取り組みにおいては、私たちの重要なパートナーです。連携して進めています。
現在、EIPAの会員は急速に増加しています。ただ、その大半は日本企業です。個人的にはその点は懸念しています。なぜならば、電子インボイスをめぐるグローバルの最新の動向を認識しておくことが不可欠だと思っているからです。
私は、QMS Internationalが、自らのサービスプロバイダーとしての経験のEIPA会員への還元により、新しい風を吹き込んでくれるものと確信しています。
(菅原) そうですね。電子インボイスの議論はまさに欧州が中心です。Peppolの議論も含め。ただ、海外企業にとって、それを知っているだけでは十分ではありません。日本のマーケットでビジネスをするためには、日本の仕様のコンセプトを正確に理解しておくことも重要です。少しご説明ください。
(加藤) まず、日本の電子インボイスの取り組みにおいて、”E-Invoice”は“B2B Tax compliant e-invoice”だということを認識する必要があります。ここでいう”Tax”は”Japanese Consumption Tax”です。この”Japanese Consumption Tax”は細部には違いがあるが、ほとんどEUVATと同じです。
したがって、例えば、JapanSpecificationの中にあるJapan ruleを理解するとしても、それほど難しいことではないと思います。
(菅原)お久しぶりです。初対面は4-5年前ですね、当時、加藤さんは財務省、私はバイオテクノロジー企業で働いていました。まさか、このような形でお会いし、対談までするとは考えていませんでした。
(加藤)私も再会できてうれしいです。まさかExchange Summit 2021 in Viennaでの私のスピーチを現地で聞いていたとは思いませんでしたし、菅原さんがE-Invoiceの世界に身を置いていることにも驚きました。QMS Internationalで働きだすきっかけは何があったのですか?
(菅原)バイオ企業で働いている時代に、製造工程、品質管理はもちろん、種々許認可や国ごとの対応をしないとたとえ良い商品でも顧客のもとに届けられないという経験をしました。すべてデータ化しているとは言っても、顧客ごとにフォーマットが違う、数多い認証団体に毎回書類を提出して認証を得ないといけない、など、ペーパーワークは減っても結局入力しなおしなど、単純作業が増えて何とか良い仕組みはないのかと思っていました。
また、コロナで働き方が変わったとき、ちょうど20年の春位に、傷ついた産業の復活に、健康関連分野とブロックチェーンについて政府が積極的にスタートアップを援助する、というようなスイスのニュースを偶々見て、フィンテックではないブロックチェーンが使えないか、と思いました。色々探した挙句、自分の住む州に、Quadrans財団というNPOがオープンソースでブロックチェーンを供給していると知り、コンタクトをしました。その後、QuadransのCEOが持つイタリアのアプリ/ソフトウェア会社Foodchainとの合弁として、欧州以外への展開や戦略プロジェクトのマーケティングを担う目的で設立したのがQMS Internationalです。
IT・ハイテクビジネスに業界転職したという認識ではなく、プラットフォーム提供、公共財の提供という使命で動いています。(よく言うIT業界の人、動きと違うのでは、と自覚)。畑違いですが、マーケティング、ストラテジーとして比較的早くキャッチアップできたのはそのようなところだと思います。畑違いといえば加藤さんはなぜにデジタル庁?何を担当していますか?
(加藤)とても興味深い話ですね。私の話をします。私はこの9月からデジタル庁で働いています。デジタル庁は9月に新しく設立されたものなので、私はそのイニシャルメンバーの一人です。
私の主な役割は、日本の電子インボイスのプロジェクトをリードすることです。ご承知のとおり、そのプロジェクトは、昨夏より、EIPAと連携し、開始されています。最初のステップは電子インボイスの仕様についてペポルをベースとすることを決めることでした。昨年12月、デジタル改革担当大臣がそれを決めました。その後、現在に至るまで順調です。最近では、その仕様のドラフトをOpen PeppolのHPで公表しています。
私の専門は税制です。とりわけ、消費税制度には6年間携わっています。2023年10月から実施される、欧州と同様の仕入税額控除の仕組みである「適格請求書等保存方式」の策定にも携わりました。その知識と経験を最大限活用しています。