(菅原)前回の対談(2021年10月)から1年が経過しました。日本でのPeppol e-invoiceをめぐる状況に大きな進展があったと思います。
(加藤)大きく進展しました。2022年7月からは、Peppol Certified Service Providerのaccreditation processが開始されています。現時点(2022年12月末)で21社のprocessがcompleteしています。12月には、大手会計システムベンダーの1社が,ついに Peppol e-invoiceのサービスを開始しました。
(菅原)リストを見ると、日本のService Providerだけでなく、海外のService Providerも目立ちますね。当初、海外のService Providerから、日本での認定は難しい、等の声が多かったですが、全くの杞憂でしたね。
(加藤)私は、初めから「日本は海外のService Providerにもopenだ」と伝えてきました。その結果だと思います。
(菅原)海外のService Providerは、色々な目的があって、日本の認定を受けていると思います。どんな目的が多いですか。
(加藤)様々です。顧客である欧州企業の日本支社・支店のPeppol e-invoice対応をサポートすることを目的にしているService Providerもいます。さらに、日本企業の現地法人のPeppol e-invoice対応とともに、日本のHQの対応も進めるといったService Providerもいます。
(菅原)やはり日本市場への大きな興味なのだと思います。ところで、日本のERPシステムや会計システムベンダーの動きについて、少し教えてください。Peppol e-invoiceの利点は、インボイスデータの交換だけでなく、それが自動処理されることに意味があると思っています。
(加藤)そのとおりです。 Peppol e-invoiceは、構造化されたインボイスデータです。故に、システムにより自動処理されます。その観点から、Digitalizationを加速することができるツールの一つです。他方、日本のERPシステムや会計システムベンダーの方の中には、残念ながら、Peppol e-invoiceをインボイスデータ交換のためのtoolとしてしか考えていない者も少なくありません。
(菅原)インボイスデータの交換だけだと、構造化されたデータのメリットは限定的になってしまいますね。構造化されたデータであることの価値を見落としてはいけませんよね。改めてそれに着目し、シンプルにそれを活用するサービス・プロダクトが望まれますね。
(加藤)もちろん、Peppol e-invoiceはインボイスデータ交換のためのツールでもあります。その観点からも、活用できる余地はまだまだあります。例えば、請求代行を行っている事業者のオペレーションです。請求業務をアウトソースする事業者は、請求がhuman readableな形で行われることを好む傾向にあります。そして、そのような顧客のニーズにこたえるため、いまだに紙やnon-structured dataでinvoiceが発行されています。
(菅原)残念な状況ですね。何か対応はしているのですか。
(加藤)とりあえず、「Peppol e-invoiceを使ってみてはどうか」と提案しています。その提案にこたえてくれるような会社も出てきています。
(菅原)重要な動きですね。例えば、BPO大手企業が、請求代行においてPeppol e-invoiceを用いるなどしたら、De Facto Standardになることも期待できますね。 大日本印刷さんがこのようなことを考えているようなので、機会があれば色々聞いてみたいですね。
(加藤)実は, 日本のERPシステムベンダーや会計システムベンダーは、受領した請求の処理にフォーカスしたサービス・プロダクトに注力し、Peppol e-invoiceの発行の機能強化が遅れている気がしています。Peppol e-invoiceの浸透のためには、Peppol e-invoiceの発行機能は非常に重要だと思っています。ベンダーが発行機能の強化にも注力してくれることを期待しています。
(菅原)ところで、少し話が戻りますが、インボイスデータの交換だけではなく、構造化されたデータをうまく活用していくことも重要だと思います。その点、いかがでしょうか。
(加藤)そのとおりです。構造化されたデータが活用されるためには、それが交換されなければならないことは言うまでもありません。しかし、それは目的ではない。個人的には、インボイスデータに含まれる価値のある情報を活用することを目的としたサービス・プロダクトがもっと提供されることを期待しています。
(菅原)海外では、地方公共団体、インフラ、ロジスティクス、リテールなどの業界が構造化されたデータの利用をしている、あるいは利用しようと計画しているようです。シンガポールではインボイスナウ→ペイメントナウという連携サービスや、中小企業向け銀行がPeppol e-invoiceを利用しています。ただ、既にEDIとして林立の間隙を縫うことにもなるので、新しい付加価値創出など、試行錯誤をしているようです。
(加藤)少し時間がかかるかもしれませんね。金融機関の役割は注目すべきポイントです。Peppol e-invoiceの取組の次のマイルストーンとして考えておきたいですね。
(菅原)標準化されたデータであるPeppol e-invoiceを活用して、よりインターオペラブルな利用を可能にする工夫を各社続けてデジタル化が推進されると良いですね。私どもも色々な情報の網を張っていきたいと思います。
本日は年の瀬のお忙しい時に、どうも有難うございました。加藤さんをはじめ、読者の皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。